タイ中部の古都ロッブリーは、サルが街中に現れることで知られ、観光の目玉の一つでもある。だが数が増えすぎ、市民生活への影響が深刻化している。鳴き声やふん尿の被害がひどく、廃業を余儀なくされた店も多い。当局は「猿害」に対処するため避妊手術を進め、頭数制限に乗り出している。
タイ中部ロッブリーのカー用品店内で遊ぶサル=共同
「近くのコーヒー店はオープンして2日で営業をやめてしまった」。中心部にある商店街の一角で、雑貨店を営むユパ・スリサングアンさん（70）がぼやいた。大半が空き店舗。サルは路上を闊歩し、数十匹の群れが屋根の上を跳び回る。
威嚇するため店頭にワニやトラの縫いぐるみを置いてみたが、すぐに慣れてしまい効果はない。ユパさんは「昔はサルが好きだったのに、今はうんざりすることばかり」とため息をついた。
国立公園・野生動物・植物保全局によると、ロッブリーのサルは約6千匹。この数年で3倍に増えた。大勢の観光客が餌付けをするようになったことが原因とされる。
同局のナロンポン第1保護区長は「廃業したホテルもある」と明かす。一定数の強制移住を検討したものの「別の場所で新たな問題が起きかねない」と見送りに。結局、9月末までに1300匹に去勢や避妊の手術をすることになった。
ただサルは依然として貴重な観光資源だ。他の県から来た男性（29）は仏塔近くでサルに餌をやっていた。「お参りもできるし、仏教では餌やりは徳を積むことにもなる」。また訪れるつもりだという。
同じ商店街のカー用品店には、20匹ほどのサルが中に入り、荷台の上で遊んでいた。店主のパティパン・タンティウォンさん（64）は「サルに罪はない。人間の方が合わせていくしかない」。達観した表情で黙々と帳簿を付けていた。
（ロッブリー=共同）
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August 08, 2020 at 08:48AM
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