首里城の正殿などが全焼して31日で1年。さまざまな原因が取り沙汰されたが、今年1月に警察の捜査が終結していることをご存知だろうか。結論はだれも刑事責任を問われない「事件性なし」というものだった。
火災は原因の特定が重要
こうした大規模で特殊な火災の場合、(1)故意による放火か、(2)過失による失火か、(3)自然発火など故意も過失も認められない偶発的な事案か、その真相解明には困難を極める。
まず、警察は、現場周辺に設置されていた68台の防犯カメラ映像を精査するとともに、警備員らを取り調べた結果、放火の可能性はないと断定した。
次に過失の有無・程度やその対象者の特定を進め、出火元とみられる正殿の北東部から収集した配線など46点の証拠物を科学捜査研究所で鑑定した。
しかし、延長コードなど電気系統のショートか否か、火災の原因を具体的に特定するには至らなかった。
証拠の大半が焼損
というのも、高温の火災が何時間も続いたため、客観的な証拠の多くが燃えてしまったからだ。
激しく燃える様子は、次の動画からも明らかだ。
(時事通信映像センター「那覇市消防局撮影の首里城火災映像」)
ここまで延焼が拡大したのは正殿にスプリンクラーがなかったからだが、そもそも正殿はその用途や規模から消防法で設置義務の対象外となっており、適法だった。
しかも、正殿は旧国宝建造物を復元したものであり、那覇市建築審査会の同意を得たうえで、耐火性能、内装制限、防火区画といった建築基準法の適用が除外されていた。
結局、警察は「事件性なし」との判断を下さざるをえなかった。
再建に向けて全国から多額の募金が集まるなど社会に大きな衝撃を与えた惨事だったが、新たな事実が判明する可能性もなく、警察の捜査は火災から3か月となる今年1月で終結したというわけだ。
那覇市消防局も、今年3月に出火場所や原因の特定には至らなかったとの調査結果を公表している。
失敗から学べ
ただ、防火対策や火災の初期段階における対応、消防活動などにさまざまな問題があったのは確かだ。
沖縄県の再発防止検討委員会も検証を進め、今年9月には中間報告書を取りまとめた。
次のような指摘が正鵠を得ていると思われる。
「文化財的価値のある建築物や展示物を守るためには、建築基準法や消防法とは別の観点からの防火対策、設備(易操作性の消火栓等)や管理・運営での対応(自衛消防隊による初期消火等)を検討する必要がある」
同様の危険を有する施設は全国に数多くある。失敗から学ぶべきことも多いのではなかろうか。(了)
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