この連載について
自社で企画・製造した商品を自社のチャネルで販売するD2C(Direct to Consumer)のビジネスモデルが注目されている。D2Cの本質は、購入までのプロセスを通して、ブランドの価値を直(Direct)に体感してもらうところにある。それを後押しするのが、顧客の共感を生み出す「ストーリー」だ。この連載では、筆者が注目するD2Cブランドのストーリーとその語り手であるブランドオーナーに注目し、顧客の心をつかむコミュニケーションの在り方を考察する。
第2回で取り上げるのは、スキンケアブランド「meeth(ミース)」。代表を務めるのは運営元のmeeth創業者でモデル・美肌研究家のソンミさんだ。
20代のときに芸能活動をしていたソンミさんは、周囲のきれいな芸能人たちと自分を比較して、外見コンプレックスを感じることが多かった。一方で「透き通るような肌がきれいだね」と褒められることもあり、肌を自身のチャームポイントとして認識し、伸ばしていこうと決めて、さまざまなスキンケアアイテムを試すように。自らの肌を使ってテストしながら、美容成分についても学びを深めた。
しかし、30代を迎えるころ、自分が心から納得して使えるスキンケアアイテムがあまりないと気付き、それなら自分で商品を開発しようと動き出した。そして2019年3月にmeethを立ち上げ、ECプラットフォーム「Shopify」を活用してECサイトを展開し、現在に至っている。
芸能界にいたとき、ソンミさんは「消費されていく感覚」に苦しんでおり、義務感で動いていた時期もあったという。しかし、meethに関しては「自分が作りたいものを作っている」という自信や使命感をもって向き合っている。今回は、そんな彼女が大事に育てるブランドを見つめる。
皆の肌を美しくしたいという思いから
meeth誕生の契機となったのは、あるときSNSでお気に入りのスキンケアアイテムを紹介したことだった。特に誰かの依頼があってした投稿ではないが、ファンから感謝の言葉をもらった。そこで、自分が心からいいと思うスキンケアアイテムを作って、慕ってくれるファンたちの肌をきれいにしたいと思い立ち、ブランド立ち上げに向けて動き出した。
ブランド初の商品となった炭酸ガスパック「モアリッチパック」は発売と同時に完売した。当時、ソンミさんのInstagramアカウント(@sonchan0111)のフォロワーは約2万人(2020年9月10日時点では約5万人)。インフルエンサーとしてはさほど多くない。しかし、すこやかな美肌で知られるソンミさんが、肌への思いを自分の言葉で語るアカウントにはコアなファンがついている。一人一人の熱量の高さを考えれば、その影響力を単純にフォロワー数だけで測ることはできない。
著名人がスキンケアアイテムやコスメの「プロデュース」に携わることは少なくない。しかしその内実は単なる広告塔としての名義貸しだったり、実際に商品開発に関わったとしてもせいぜい彼らが出した意見を何らかの形で反映したにすぎなかったりする場合もある。
ソンミさんは真逆だ。自ら全国各地を訪問してパートナーを組む工場を探し、使用する成分を調査して製造現場にも顔を出す。「あの成分を入れてほしい」「使用するとこんな効果が期待できるスキンケアアイテムを作りたい」と、自分の理想を詰め込んだ具体的な要望を伝える。最初はほぼ原価度外視で、後で見積もりを見て驚くこともあったという。
ソンミさんが語る。
「meethの顔ともいえる商品『モアリッチパック』は、ジェルとパウダーをミックスして使う二剤式の炭酸ガスパックで、最先端のバイオテクノロジーを用いて製造しています。この製造方法に関して特許技術を持つ工場は、日本に1カ所しかありません。モアリッチパックの製造は、千葉市にあるその工場にお願いしています」
ブランド立ち上げ費用は全て自己資金でまかなった。商品設計からECサイトの構築、プロモーション展開、価格設定まで、ブランドに関する全てをソンミさん自身が担ってきた。meethは2019年5月に法人化したが、2020年1月に社員を雇うまでは、商品の発送業務や1日に100件以上来る問い合わせ対応などの事務も行ってきた。
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October 09, 2020 at 07:00AM
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