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楽天モバイルに聞く「Rakuten Mini」開発秘話 なぜ自社ブランド端末が必要だったのか - ITmedia

 データ容量無制限の「Rakuten UN-LIMIT」プランを引っ提げ、4月8日に本格サービスを開始した楽天モバイル。月額2980円(税別)の料金を300万人限定で1年間無料にするキャンペーンや、auローミングの容量を2GBから5GBに増量したことでも話題を呼んだ。自社回線のエリアは大手3キャリアと比べるとまだまだ狭いが、イー・モバイル以来の新規参入とあって、注目を集めている。

 鳴り物入りで新規参入を果たした楽天モバイルだが、Huaweiのhonorシリーズを独自モデルとして導入するなど、MVNOのころから注力していたのが端末ラインアップだ。

 そんな楽天モバイルが、MNOのサービス開始に合わせて送り出したのが、自社ブランドを冠した「Rakuten Mini」だ。初の自社ブランド端末だったのはもちろんのこと、ディスプレイが3.6型と現行モデルの中では驚くほどコンパクトだったり、SIMカードがeSIMのみだったりと、特筆すべき点が多い。コンパクトながらFeliCaを搭載しているのも、Rakuten Miniのインパクトを大きくした。

Rakuten Mini 3.6型ディスプレイを搭載する小型スマホ「Rakuten Mini」

 大画面のスマートフォンが全盛の中、このサイズの端末を独自ブランドで発売するのは、チャレンジングな取り組みといえる。そこでRakuten Miniの開発や販売に携わった楽天モバイルのメンバーに、同モデルの特徴やラインアップ全体の方向性を聞いた。インタビューに答えたのは、楽天モバイル 営業本部 デバイス戦略部 部長の小野木雅氏と、ネットワーク本部 デバイスエンジニアリング&オペレーション部 部長の塚本直史氏、営業本部 デバイス戦略部 デバイスビジネス開拓課 課長の田中智也氏の3人。

Rakuten MiniのFeliCa搭載は初期から決まっていた

―― 無料サポータープログラムの二次募集に合わせて発売したRakuten Miniですが、この端末を企画した経緯や背景を教えてください。

塚本氏 一昨年(2018年)の11月、12月ぐらいから、話がスタートしています。楽天としての訴求ができる端末を世に送り出そう、楽天のサービスを享受できる端末を準備しようという経緯で、その時点でコンセプトとしてFeliCaを搭載することも決まっていました。おサイフケータイ対応で気軽に持ち歩けるということで、ディスプレイサイズも初めのころから、4型前後で話を進めてきました。ですから、まずFeliCaありきで考え、楽天の全てのサービスも享受できる端末として企画を進めていきました。

田中氏 なぜオリジナルデバイスなのかというところを、少し補足します。われわれには仕掛けたい戦略があり、やりたいことを(端末として)先駆ける必要もありました。それをメーカーのものに組み込もうとすると、どうしてもポリシーのコンフリクト(衝突)も起こってきます。例えば、eSIMを訴求する上では、いち早くやろうとなったら、やはり自分たちでやった方がいい。自社ブランドの重要性に加え、今後、お客さまの声をダイレクトに反映させられることも含めて、ああいった形になりました。

楽天モバイル楽天モバイル 楽天モバイルの塚本氏(写真=左)と田中氏(写真=右)。取材はオンラインで実施した

―― お話をうかがうと、FeliCaが最重要ポイントだったようですが、サイズ感もそこに合わせてのことだったのでしょうか。

塚本氏 そこがスタートポイントです。画面サイズは議論があり、候補もいろいろと検討しましたが、まずはクレジットカードサイズをターゲットに置き、今の3.6型に落ち着きました。

―― ということは、企画時期を考えると、UN-LIMITのような大容量プランを意識していたわけではないんですね。

塚本氏 はい。そこは意識していません。

eSIMは来店せずに契約できるのがメリット 小型化にも貢献

楽天モバイル 小野木氏

―― 次に、eSIMに対応した理由を教えてください。企画をスタートした2018年は、ちょうどiPhone XSやXRがeSIMに対応した直後だったと思います。そういう意味だと、かなり早いですよね。

小野木氏 物理的なSIMカードは、物理的であるがゆえに、ユーザーの方がショップに行かなければなりません。差し替えて使えるのはいいのですが、eSIMに置き換えれば、お客さまはわざわざ来店していただく必要がなくなります。eSIMを利用可能な端末がもっと普及すれば、プロファイルを入れ替えるだけで(物理SIMのように)オン・オフを切り替えられるようになります。ユーザーの利便性も上りますし、事務手続きの煩雑さを撤廃できる利点もあります。

塚本氏 前職でもそうでしたが、技術的には一昨年の12月ぐらいから、デバイスにどう搭載していくかは、各メーカーが考えていました。AppleやGoogleはいち早くやりましたが、検討に関しては、それほど大きな抵抗はなく、技術的にも問題なく進めることができました。

 eSIM一本にするというのは確かにチャレンジングではありましたが、小野木が申し上げたような理由で、そこにフォーカスしていくことにしました。せっかく“楽天印”の端末を作るのであれば、本当にやりたいことにフォーカスする。サイズの制限もあって、eSIMに一本化することになりました。

Rakuten Mini eSIMを搭載していることも特徴だ

―― あのサイズ感は、やはりeSIMあってのことなんですね。逆に、物理SIMを搭載していたら、もっと大きくなってしまったのでしょうか。

塚本氏 厚みを増せばできましたが、あのサイズに収めるのは難しかったと思います。FeliCaと同様、eSIMに関してもスタートポイントに近いかなり前の段階から決めていたので、(それ以外の)検討は特にしませんでした。

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約2万円という低価格を実現できた理由は?

―― 自社企画、自社ブランドの端末は初めてだったと思います。形にするには、いろいろと大変なこともあったのではないでしょうか。

塚本氏 先ほど、一昨年の11月、12月からスタートしたとお話しましたが、実は僕が楽天に入社したのも、そのころのことです(笑)。こういうものをやりたいというお話を受け、楽天に入って始めています。初めは人も少なく、ODMのパートナーを決めるのも少ない中でやっていたので大変でしたが、月がたつごとにメンバーが増えていき、セールスの方々も入ってこの端末をどう作るか、どう売るかというところまで話が進んでいきました。

―― FeliCa搭載など、機能も充実していながら、価格が2万円程度だったことにも驚きました。2万円というと、どうしても改正・電気通信事業法の端末購入補助の上限額を思い出してしまうのですが、そこは意識されたのでしょうか。

塚本氏 価格については、ODMと直接やりとりしたのが大きいですね。僕がメーカー出身ということもあり、BOM(Bills of materials=部品表)の積み上げで、あのぐらいの調達価格に収まることはイメージしながら話をしました。コストの議論も、直接やりとりできたのが大きなポイントです。

小野木氏 販売価格に関しては、純粋に卸していただける価格に対して一定の販売利益を乗せているだけです。そのフレームワークに乗せたら、ちょうどあの価格になりました。2万円という上限を意識したことは一切なく、自然体にお手頃な価格を実現できたと思います。

OSバージョンアップは計画していない

―― ソフトウェアに関して、ユーザーインタフェースが独特ですが、同程度のサイズの端末も似たような仕上がりになっています。あれはオリジナルなのでしょうか。

塚本氏 オリジナルです。ただ、オリジナルですが、設計とイメージをお伝えして、あとはODMにお願いしています。他の中国メーカー製端末にああいったものが搭載されているのは知りませんでしたが、もしかすると、そういったことでテイストが近くなっているのかもしれません。

Rakuten Mini ホーム画面が縦方向にスクロールする独自のUIを採用している

―― ソフトウェアアップデートについての方針を教えてください。メーカーによってまちまちですが、ここはどのようにお考えでしょうか。

塚本氏 セキュリティアップデートは、数カ月に1回の単位でやっていきます。ただし、OSバージョンアップは、カスタム品という扱いなので、今のところ計画はしていません。オリジナルで作っているので、OSを上げて、何か(トラブル)が発生することは避けたいと思っています。

楽天端末の中でトップ3の売れ行き

―― 実際に発売してみて、反響はどう捉えていますか。

田中氏 一言で言うと、期待以上の反響でした。詳しい方には、楽天モバイルが初めて出した端末と分かった上で、手に取っていただけています。ポジティブな意見が多いというのが、直感的な印象です。ちょっとした外出時の持ち歩きに便利、小さくてデザインもいいといった意見も聞きます。ランニング時に持ち運び、音楽とおサイフケータイに使うというユースケースも想定していましたが、想定通りの使い方をされている方もいます。売れ行きに関しては、UN-LIMITプランで買える端末の中では、トップ3に入っています。

―― どういった層に受けているのでしょうか。

田中氏 新しいデバイスやテクノロジーに興味がある方は多いですが、だからといって男性に寄っているかといえば、そうでもありません。男女年齢問わず、使っていただけています。新しいライフスタイルにこだわっている方に使われているのではないでしょうか。事前に調査をしたときも、女性に小型の端末を待ち望んでいる方が多くいました。そういう方々も使われているため、いわゆるギークな方だけにウケているかというと、そうでもありません。

―― カラーバリエーションごとの傾向はいかがでしょうか。後から発売されたクリムゾンレッドはコーポ―レートカラーでもありますが、人気のほどはいかがですか。

田中氏 レッドが出てまだ間もないこともあり、アップルトゥアップル(同条件)で比較できませんが、印象としては満遍なく売れています。ブラックやホワイトを好む方は、端末の場合どうしても多くなりますが、うまく散っているという感じです。

Rakuten Mini 4月17日に新色としてクリムゾンレッドも発売した

―― ちなみに、やはり皆さんeSIMでの契約と一緒に端末を買われているんですよね。単体販売もしていますが、そちらはいかがでしょうか。

田中氏 楽天市場だけでなく、楽天モバイルのサイトからも端末だけを購入できるようにしています。バンドルということは強調していませんが、eSIMということもあり、基本的には一緒に買っていただくことが多いですね。ただ、中にはギークな方もいるので、端末で買われてIIJのeSIMを入れてみたり、GoogleのFiを入れてみたりという方もいます。1月に販売を開始したときは、そういった質問もコールセンターに来ていました(笑)。

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楽天ブランドの端末は今後も継続していく

―― Rakuten Miniですが、売れ筋ということもあり、今後はシリーズ化していくのでしょうか。また、3.6型ということもあり、楽天のサービスをバリバリ使うのは少々厳しい印象も受けました。後継機では大画面モデルもありえるのかといったことも教えてください。

塚本氏 開発関連でいうと、ディスプレイサイズには確かにいろいろなご意見がありました。楽天ブランドの端末は今後も継続していきますが、開発にあたっては、Rakuten Miniでいただいたご意見を反映しながら、より魅力のある商品にしていきたいと考えています。

田中氏 Rakuten Mini 2、Mini 3という同じサイズで出すのかは今後の議論次第です。シリーズ化していくのか、コンセプトを変えるのかといったことはありますが、一定のラインで継続していく予定です。

機能と価格のギャップが大きい端末ほど売れている

―― 次に、Rakuten Mini以外のラインアップ全般についてお話を伺えればと思います。ハイエンドからミドルレンジまで、幅広いラインアップをそろえていますが、売れ筋はどういったところになるのでしょうか。先ほどRakuten Miniがトップ3というお話がありましたが、残り2つも教えてください。

小野木氏 われわれの回線を契約いただく方は、どちらかというと、コストを抑えつつ、ちゃんといいものを買いたいと考えています。ですから、Rakuten Miniを除くと、今売れているのは「OPPO Reno A」や「AQUOS sense3 lite」になります。その意味では、傾向はオープンマーケットに近いかもしれません。売れているモデルの傾向は、税込みで3万円台といったところです。

―― 他にも同程度の価格帯の端末はありますが、違いはどこにあるのでしょうか。自分はコスト重視でOPPOの「A5 2020」にしました。

小野木氏 A5 2020も売れていますよ。ただ、Reno Aにしても、AQUOS sense3 liteにしても、搭載されている機能に対し、手と取ることができる価格のギャップがいい意味である端末です。Rakuten Miniも、コストパフォーマンスに優れているところは商品性の1つで、ギャップが大きければ大きいほど売れているという感じですね。

 他の大手通信事業者と大きく違うのは、お客さまの目が肥えていることだと思います。他社の場合、フィーチャーフォンからのマイグレーションが主な目的になっている端末もありますが、そういったユーザーは楽天モバイルにはいません。ストックのユーザーと、ターゲットユーザーが異なる印象もあります。

OPPO Reno A 「OPPO Reno A」も売れ筋。楽天モバイル向けにはストレージを128GBに増量している

―― 金額面ではハイエンドモデルもそろえていますが、こういったところに徐々にシフトしていく可能性はありそうですか。

小野木氏 このトレンドは続くと思っています。弊社に限らずですが、電気通信事業法の改正があり、大幅な値引きができなくなりました。割引ができていた時代も、売れていたのは実質価格で2万円から4万円ぐらいの端末です。その辺が、端末価格として、そもそものスイートスポットなのだと思います。自然体(割引なしの素の価格)で、その価格帯に仕立てることがわれわれの役割だと思っています。

どの端末でも使える“オープンマーケットデバイス”を推進

―― eSIMについては現状、Rakuten Miniオンリーですが、他の端末に広げていくお考えでしょうか。

小野木氏 eSIMもそうですし、デュアルSIM/デュアルスタンバイのモデルも当然ありだと思います。そういった協議はメーカーとしながら、いかに普及させていくのかを考えていきます。

―― 他キャリアはeSIMに及び腰なところがありますが、その点は後発なので武器になるということでしょうか。

小野木氏 その通りです。提供者側としてはそう考えているので、お客さまに受け入れられるのであれば、もっと積極的にやっていきたいですね。

―― 調達するメーカーのバリエーションに関してはいかがでしょうか。Xiaomiに代表されるように、日本に参入するメーカーも増えています。

小野木氏 楽天グループは楽天市場など、楽天としてのアセットが多数あります。弊社として推進しているのがオープンマーケットデバイスで、目指しているのはどの端末を買われても、物理SIMを入れたり、eSIMをダウンロードしたりするだけで使えるようになるということです。楽天市場をエコシステムとして活用していただき、従来のメーカーだけでなく、そうでない新規のメーカーが参入するにはどうすればいいかという戦略を練っています。

 その戦略の中で、お客さまはさまざまなメーカーの端末をお使いいただけるようになります。OPPOやHuaweiも楽天市場にマーケットがありますが、今後新規参入するメーカーもあるでしょう。そういった観点で、お客さまに多くの端末の中からお選びいただける、“選択の自由”を提供していきたいと考えています。

―― SIMフリーモデルの受け入れについては、どのようにお考えでしょうか。回線との検証結果を出されていましたが、まだ載っていない端末も少なくない状況だと思います。

小野木氏 今持っている端末を使いたいという声は、ものすごくたくさんいただいています。それもあり、機種別の対応表を出させていただきました。動作検証については、広さや数の多さに合わせて、必要に応じてやっていきます。

取材を終えて:後継機は“無制限”にフィットした端末に?

 Rakuten Miniは、FeliCaの利用を中心に企画された端末だったようだ。確かに楽天には、グループのサービスとして楽天Edyがあり、楽天経済圏の中心である楽天スーパーポイントとの連携も取れている。おサイフケータイを中心に使うのであれば、あのサイズ感にも合理性はあると感じた。一方で、UN-LIMITがサービスイン直前に決まったこともあってか、データ通信使い放題とはあまり相性がよくないような印象もある。後継機は、データ通信が無制限で使える同社の強みによりフィットした端末になっていくのかもしれない。

 ラインアップ全体では、やはり意識的にミドルレンジモデルを強化しているようだ。特にReno Aは楽天限定でストレージが通常モデルより大きいため、売れ筋のトップ3に入っているのは納得できる。こうした特徴付けはMVNO時代から、楽天が得意としているところだ。後発ゆえに、eSIMにも積極的だ。Rakuten Miniに限らず、メーカーブランドのeSIM搭載端末が増えることにも期待したい。

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