ニューヨーク市では6月第4週から店舗やオフィスなどの本格的な再開計画がはじまっているが、美容業界では店舗の再開に慎重なブランドが一般的だ。実店舗をそのまま再開するのではなく、製品補充に使われるカーブサイドピックアップを採用するところも多い。こういった状況では、美容品の試用やお気に入り商品を見つけてもらうのは容易ではない。
そこで、各社は効果的なオンライン試供品プログラムの模索に力を注いでいる。店舗内でテスターを提供する見通しが立たない一方、オンラインのトラフィックは増加しており、時間だけでなく販売増の傾向にある。同時に、買い物客の58%がオンラインでは商品を試せないため購入できていないと回答している。
サンプルの包装と製造を行っている企業のアーケード・ビューティ(Arcade Beauty)のデジタル販売およびマーケティング担当バイスプレジデントを務めるアリー・ソーレンソン氏によれば、新しいプロジェクトの問い合わせが前年度比で30%増加しているという。アーケード・ビューティのクライアントは400社以上にのぼる。資生堂やLVMH、パット・マクギャレス・ラボ(Pat McGrath Labs)、グロッシアー(Glossier)といったブランドが名を連ねており、Sephora.comに提供されているサンプルの実に8割が同社のものだという。
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コンバージョン率は10倍にもなる
高級オーガニック美容ブランドのケアーウィス(Kjaer Weis)の創業者、クリステン・ケアー氏はこれまで6年にわたりオンラインで試供品を提供してきた。これはブルーマーキュリー(Bluemercury)、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)、デトックス・マーケット(The Detox Market)といった卸売店舗まで足を運べないカスタマーのための措置だ。
「商品を試せる店舗がない地域もある。だがファンデーションなど色を試してもらうことが重要な商品もある。こうしたサービスはカスタマーに良い体験を提供するために重要というのが当社の信念だ」と、同氏は語る。さらに色だけでなく「オーガニックな化粧品の感触やパフォーマンスも感じてもらいたい」という。
ケアーウィスはアーケード・ビューティのような外部のサンプル企業とは提携していない。同社の試供品の用意やラベリングは実習生が担当しており、カスタマーはサンプルを無料で取り寄せられるようになっている。同社は試供品について積極的にマーケティングは行っていないが、ECサイトのカスタマーサービスページやインスタグラムでの相談窓口「ビューティーアドバイザー」を通じて提供しており、試供品を提供したオンラインカスタマーのコンバージョン率は10倍にもなっているという。
「カスタマーに合わないファンデーションを送ることは誰の得にもならない。カスタマーは満足せず、企業としても商品の無駄になる。価値のある商品のサンプルを送ることが大切だ」と、ケアーウィスは述べている。
「投資するだけの価値がある」
全商品のサンプルを作成するのはコストがかかる(たとえばケアーウィスでは22の商品を展開しており、16種類の色を用意しているものもある)。だが、クリエイティブ美容エージェンシーのベース・ビューティー(Base Beauty)の創業者兼クリエイティブ・ディレクターのジョディ・カッツ氏は主力商品のサンプル提供は重要だと指摘する。「ベストセラー商品には投資するだけの価値がある」と、同氏は語る。
グローバル展開している企業の場合、試供品プログラムは1商品あたり数億円かかることもあると、カッツ氏は述べている。そのためマット、セミマット、ツヤ、濃さといった要素は別として、商品ごとに色のバリエーションの統一が重要になる。ケアーウィスのオンラインサンプルは厳密に数などが決まっているわけではなく、要求があれば商品あたり5から6のサンプルを提供しているという。
現時点では、試供品を有料としている美容ブランドも存在する。完全天然由来のスキンケアを標榜するインディーブランド、ビクトリアランド・ビューティ(Victorialand Beauty)は、4商品のサンプルを10ドル(約1070円)、50ドル(約5400円)以上の買い物をした場合は無料で提供している。全注文で送料は無料となっており、ケアーウィスと同様、サンプルは社内で制作されている。
フレグランス業界では一般的
これはフレグランス業界では特に一般的な試みになっている。高級ブランドのハーモニスト(Harmonist)では、パリとロサンゼルスに展開している自社のブティックだけでなく、バーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)やニーマン・マーカス(Neiman Marcus)といったサードパーティストアでも無料で試供品を提供している(ハーモニストと両社はコロナウイルスの感染拡大の直前に提携した)。世界的な感染拡大を受けて、同社のCEO、サマンサ・フィンク氏はオンラインサンプルの取り寄せ価格を18ドル(約2000円)から6ドル(約640円)に引き下げている。
「当社にとって最優先事項はブランドの認知度とクライアントのリーチだ。当ブランドを初めて利用するカスタマーにとって躊躇するような価格設定かもしれないが、一度使えば気に入っていただけるということも分かっている」と、フィンク氏は語る。ハーモニストのフレグランスは225ドルから305ドル(約2万4000円から約3万2500円)となっているが、ブティックで試供品を利用したカスタマーの実に6割が商品を購入している。
ブランド知名度向上はファネルの一番上に位置する取り組みだ。一方ソーレンソン氏は、美容ブランドは試供品をより具体的なターゲティングする必要があると指摘する。
「ブランドは試供品を新たなマーケティング戦略の一環として捉える必要がある。現在ブランドは小売企業に対しても試供品のコストを負担しており、明確な目標を定めずに全バリエーションを提供するのはコスト効率が悪い」とソーレンソン氏は語る。
「相談カウンターはいまや必要ない」
またサスティナビリティ(持続可能性)を謳う美容ブランドにとって、試供品にまつわる課題はそれだけにとどまらない。
アーケード・ビューティは約18カ月前、パートナー企業とともに試供品のオンラインプラットフォームのエイビオ(Abeo)を立ち上げた。これはコストと廃棄物の課題、ECサイトが試供品だらけになってしまう問題、試供品の過剰供給や不足を解決するための取り組みだ。エイビオは特定のオーディエンス(Z世代やミレニアル世代)をターゲットとしており、SNS上で独自のクーポン制度を設けることで試供品の数を制限している。カスタマーは4つほどの質問に回答すると試供品が送られてくるという仕組みだ。これまでのところ、エイビオの買い物客のオプトイン率は73%となっており、その人に適していると思われる色と、それより1段階暗い色、明るい色が送られる。
「ムエット(試香紙)やダイレクトメールは極めてコスト効率がよく、コンバージョン率も高い。だが提供できる場がない場合や廃棄物に抵抗があるのであれば、オンラインではこれが次善の策だ。ストーリーも伝えられる」と、ソーレンソン氏は語る。
未来派でマーケティングコンサル企業のブレインリザーブ(BrainReserve)のCEO、フェイス・ポップコーン氏もこれに同意する。「美容品の相談カウンターはいまや必要ない。カウンターのスタッフがカスタマーの買い物の方法を決めるのではなく、オンラインでどのように買い物客に貢献できるかを追求すべきなのだ」。
PRIYA RAO(原文 / 訳:SI Japan)
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