元副知事が口を開いた
大阪市を廃止して4つの特別区に分割する、通称「大阪都構想」の住民投票が5日後に迫った。報道各社の世論調査では概ね賛成が反対を上回り、ABCテレビとJX通信社が10月24日・25日に行った6回目の調査では、賛成46.9%、反対41.2%となった。
賛成の理由は「二重行政の解消が期待できるから」が最も多く、次いで「大阪の経済の成長につながるから」「維新政治を評価しているから」と続く。「二重行政解消」と「経済成長」は、松井一郎・大阪市長と吉村洋文・大阪府知事をはじめ、大阪維新の会が長年繰り返してきた主張であり、他の調査でも必ず上位を占める賛成の二大理由になっている。
では、ここに根拠はあるだろうか。私見では、「二重行政」はその存在どころか定義すら曖昧であり、自治体を再編すれば「経済成長」する理由も見当たらない。132人の研究者・専門家が反対意見を寄せた「『大阪都構想の危険性』に関する学者所見」でも、多くがこの点に異を唱える。これも維新流のイメージ戦略ではないのか──。
そこで、行政を担う当事者である大阪府庁と大阪市役所の関係者に話を聞いて回った。住民投票が可決されれば、政令指定都市の廃止・解体という前代未聞の事態となり、2025年1月の特別区施行へ向けて府市職員が実務を担うわけだが、彼らの見解はほとんど表に出ていない。箝口令が敷かれ、賛否はもちろん、話題にすらできない状況なのだ。
OBたちも「現役世代に迷惑がかかる」と多くが匿名での取材となったが、「大阪の自治を守る最後の仕事」と実名で応じてくれた人物がいる。小西禎一氏(66)。橋下徹府知事時代は改革プロジェクトチーム(PT)のリーダーや総務部長を務め、松井知事の下では副知事として支えた、「地方行政のプロ中のプロ」と言われる府庁の生え抜きである。
小西氏をはじめ、大阪の公務員たちが見た「都構想」と維新政治の実態を2回にわたって報告する。
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