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ブランドが「インクルーシブデザイン」を取り入れる理由 | 深層 - Campaign Japan

清涼飲料大手のペプシコは11月、2リットルボトルの新デザインを発表した(上の画像)。30年ぶりの大きなデザイン変更だが、デザインに関心を持つ多くの人が注目したのは、握りやすいように外周が小さくなった点だ。

ペプシコが示したのはインクルーシブデザインだった。人々の手の大きさを考え、注ぐときに握りやすいようにボトルのデザインを変更したことで、誰でも握れるようになった。

同様に、製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)のデザイナーらは、鎮痛剤ボルタレンのために、関節炎の人でも開くことができるようなボトルを開発したいと考えた。その結果、誰もが開けやすいボトルが完成した。

一部の人のためのデザイン改良が、すべての人のためのデザイン改良になる。これがインクルーシブデザインの本質だ。

国際障害者デー(12月3日)は、インクルーシブデザインという幅広い考え方を理解する好機といえよう。視覚に障がいがあっても読めるくらい大きな文字にする、車いすでも入れるようにする、音の高さを聴覚に障がいがある人に合わせるというように、特定の人々に合わせるのがアクセシブルデザインだとすると、インクルーシブデザインはもっと広く、包括的な視野をもつ。

障がいは見てわかるものばかりではない

これは障がいに対する社会の見方の変化を踏まえたものであり、「障がいは見てわかるものばかりではない」という2020年の国際障害者デーのテーマでも強調されている。インクルーシブデザインに関わる人たちだけでなく、社会全体として、人々のニューロダイバーシティー(脳の多様性)について考えなければならないのだ。

欧米の環境デザインにおける例を見てみよう。ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)にはフィラデルフィア・イーグルズやミネソタ・バイキングズなど、専用の「センサリールーム」を持つチームがある。観戦により精神に疲れを感じた人が、休憩して落ち着くための静かなスペースだ。この例では、デザインが機能性だけでなく娯楽のための場所にまで広がっていることを示している。

NFLにおけるインクルーシブデザインの例は感覚の鎮静化だが、逆に感覚の活性化を目指すケースもある。ブランド資産の観点で言えば、すべての感覚に配慮するということは、感覚の一部に制限がある顧客であってもブランドに接する機会が増えるということを意味する。視覚にとどまらず、たとえば聴覚や触覚を取り入れてデザインすることで、多様性だけでなく、ブランド認知や顧客とのつながりをも強化できるのだ。

決済事業を行うVisaは「センサリーブランディング」に取り組み、その過程でセキュリティ上のメリットも生みだした。例えば、携帯電話による決済のために制作したブランドのアニメーション、音、触覚フィードバックは、決済が完了した安心感をユーザーに与えている。

テストと学習

デザインにはテストと学習のプロセスが欠かせない。より良いデザインにつながる他、ブランド・リレーションシップを構築してくれる貴重なユーザーとの対話が生まれる可能性もある。この点で、デジタル環境は有利だ。変更を加えるのが容易なため、デザインのフィードバックと改善にインクルーシブな考え方を取り入れることができる。

Microsoftが、明るい色のボタンやタッチパッドを採用し、身体に障がいがある子供でも使いやすいアダプティブコントローラーを開発した際には、ゲーマー達もフィードバックを寄せ、さらなるカスタマイズを求めてきた。

最後になるが、インクルーシブデザインがもたらしてくれる大きな恩恵の1つは、障がい者のニーズを満たすと同時に、確立されたデザインルールを書き換えるまったく新しいアプローチや刺激的な創造につながる可能性がある点かもしれない。

Eoneの最高経営責任者、キム・ヒョンス(Hyungsoo Kim)氏が、目盛りの付いた文字盤とボールベアリングを使い、視覚障がい者向けに従来のものとはかなり異なる腕時計を開発したところ、その独創的なデザインが持つ訴求力が、視覚障がい者コミュニティの外にも広がっていった。多くの人が買い求めるようになり、今ではEoneの腕時計「Bradley」の購入者の半数以上が障がいのない人たちだ。

一部の人のためにデザインすることで、すべての人にとって良いデザインになるのだ。


ジェン・アイブズ(Jen Ives)氏はColey Porter Bellのマネージングパートナー。

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December 11, 2020 at 07:18AM
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